[ WALK✕DESIGN✕佐藤ねじ ]

歩くことからうまれる
デザイン着想メソッド

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「デザイン=問題解決」と言われて久しいが、WEBメディアの進化にともないSNS上の個人が第二の人格として成立しはじめ、個人が個人をデザインしメディアとしての機能も持ちはじめたいま。「デザイン」という言葉の意味は拡大を続け、よりマスに開かれたある種あいまいなワードとして変容しつつある。

 

そんな中、デザインの対局が「アート=問題提起」だとするならば、その中間にあたる部分に着目し、さらにそれらに「新しさ」と掛け合わせることでデザインの新たな可能性を提唱しているのが佐藤ねじさん。

 

ことクリエイティブにまつわるさまざまなコンテンツの専門性の希薄化が世の風潮として叫ばれ、「誰でもできる」ことの価値がカスタマーに重要視される現代において、「小さいけど新しいアイディア」をテーマに掲げ「誰でもできそうでできない」絶妙な距離感のクリエイティブを量産するアートディレクターだ。独創性が強く、それでいて本質的な機能を持った彼の「デザイン」の源は街を歩くことから着想されることが多いという。

 

「誰でもできる」ことから「誰でもできそうでできない」コトを生み出す佐藤ねじさんの、デザイン、そして歩くことへのスタンスを聞いてみた。

 

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「自分の中のチャネルが多い、つまり世の中との接点が多いとみえる視界が変わるんです。」

 

もともと幼少期から自分が興味を持ったいろんなことを分析することが好きだったことと、転校が多くさまざまなコミュニティと触れる機会が多かったこともあって、自分の中の属性というか価値観のチャネルのようなものを増やして、自分の思考や行動を客観的にみるクセみたいなものが自然と身についていたんです。

 

だから、デザインに関わる仕事をはじめた時も、自分がどのような立ち位置でこのデザインと接していくべきかということを常に考えていましたね。そしてアートディレクターとしてのキャリアを積み、独立を考えたタイミングで、そんな自分だからできる、あまり人がやったことのないことをやってみようと思ったんです。

 

それが、今僕たちが『ブルーパドル』と呼んでいる小さいけど新しいアイディアを見つけていくこと、『0→1』ではなく『0→0.1』ぐらいの発見をテクノロジーやデザインで今までありそうでなかったオモシロイものへと変えて世の中に発信していくことなんです。

 

そしてそれらのクリエイティブのソースを集めるにあたって僕が大事にしていることが歩くこと。

 

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よく自身や身近な人が妊娠すると街に妊婦さんが増えたようにみえる、なんてことが言われますが、人って意外と単純で自分の中にあるチャネルが増えたり、特定のチャネルがホットになったりするとみえる風景が変わるというか。

 

きっとチャネルが増えると、いままで視界には入っていても脳内で認識しておらず、結果的にみえていなかったことがみえるようになるんでしょうね。

 

だからこそいろんなチャネルをオンにした状態で街を歩くと、徒然と歩いているだけでも相当な量の発見や情報が得られて、本当にオモシロイんです。

 

同じ街を同じルートで歩いてもそれぞれの人が持っているチャネルによってそこで発見できることは違いますしね

 

「自分の価値観、オリジナリティを大事にしたい。その想いが僕を『歩く』行為へといざなってくれているのかもしれません」

 

いまの時代、気になるものがあればネットを介してすぐに情報を仕入れることができますが、あくまでも最初の検索ワードは自分で打たなければならないわけで、予想外のことって起こりにくいんですよね。

 

でも、歩く道すがら発見するものは違う。

 

ネット上にはない、予想だにしない独創性の高いモノ・コトにあふれているんです。

 

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たとえば、歩道によくある黄色い四角の中に緑の文字で『G』ってかいてある小さなマークとか、奇跡的なカタチを成している路上に捨てられたガムとか、よく見るとカッコ良いデザインだったりするんですが、あれもひとつのグラフィックととらえるだけで見える景色は変わりますし、待ちゆく人や街自体の風景にもいろんなヒントが隠されているんです。

 

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僕たちが掲げているテーマでもある『ブルーパドル』はこういった日常にあふれている出来事を切り取ってコンテンツに仕立てていくことも多々あります。

 

テクノロジーが進化した先に果たしてオリジナリティという言葉は存在するのか、というようなことが一部で言われていたりしますが、そんな時代だからこそこういった情報収集は大事だと思うんです。

 

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さりげない日常さえもアイディアの宝庫ととらえ、コンテンツとして仕立てる段でテクノロジーとアナログなものをミックスさせる。だからこそ共感性が高くそれでいて新しいアウトプットを創り続ける佐藤ねじさん。

 

ネット環境や電源、特別なスキルを必要としない「歩く」行為からそれらを生み出す彼をみていると、我々の「毎日」へのスタンスが変わる気さえした。

 

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アートディレクター/佐藤ねじ

1982年生まれ。アートディレクターとプランナー。面白法人カヤックから独立し、2016年7月に株式会社ブルーパドルを設立。「小さくても新しいアイデア」を探すということをテーマに、いろんなコンテンツを量産中。代表作に『変なWEBメディア』『Kocri』『くらしのひらがな』『レシートレター』『しゃべる名刺』『貞子3D2』など。2016年10月に著書「超ノート術」を出版。主な受賞歴に、文化庁メディア芸術祭・審査員推薦作品2015, 2014, 2008 / Yahoo Creative Award 2014 グランプリ / グッドデザイン賞2015:BEST100 / TDC賞2015, 2007など。

 


 

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