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[ WALK✕FOOD✕森枝幹 ]

歩いて得られる五感を元に
創られるオリジナリティ

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価値観には2種類ある。

 

個人が主体的につくりだす独自性の高いものと、個々人の相対的関係から生まれる共通認識 に近いものだ。

 

そして、人々がリアルタイムにネット上で意識を発信し、共有することが是とされる時代においては、前者は相対的な評価ありきのひとつの演出として取り沙汰されることが多く、本質的な意味でのオリジナルな価値観は中々表出しにくいといえる。 

 

今回紹介するのは、そのような現代において自身の確固たる価値観のもと料理を通してさまざまなメッセージを発信している「Salmon & Trout」のシェフ、森枝幹さん。

 

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彼が最も大事にしていることは自然体であること。

 

だからこそ、料理をつくる際のインスピレーションも、だれかが言ったり行ったりしている二次的な情報ではなく、自分の足で訪れた場所で実際に見て、聞いて、嗅いで、触って感じた一次的な情報から得るようにしているのだという。

 

そう、彼にとって歩くこととは料理人として、ヒトとして感覚を研ぎ澄ますための重要な作業なのだ。

 

彼にとっての「歩く」、そして彼にとっての「オリジナリティ」について詳しく聞いてみた。

 

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「自分の足で稼いだ情報や自分ならではの感覚をもとに完成度の高い料理をつくりたい 

 

社会問題となっている外来種、たとえばブラックバスなどを使ってメニューを考案したり、美味しいにも関わらず流通にはのせられず廃棄されてしまう予定の野菜を農家の方々のもとに直接出向いて仕入れたりしているので『変わってますね』と言われることがよくあるのですが、僕自身は決して変わったことをやっているという感覚はないんです。

 

お客さんに料理を楽しんでもらう上で、世の中的な価値観や先入観の上に成り立っている味ではなく、フラットな視点で対峙した際の本当の美味しさを感じてもらいたいという想いがあるだけで。

 

食材の持つブランド力やイメージには頼らず、地産地消の自分版というか、自分の足で稼いだ情報や自分ならではの感覚をもとに完成度の高い料理をつくりたいんですよね。

 

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外来種が増えアマゾン化していることから、近年『タマゾン』と言われている多摩川にも、そういった理由もあって時々出かけることがあるのですが、歩いていると食べられる植物が普通に自生していたりして楽しいですよ。

 

僕が一番うれしい瞬間は、そうやって集めてきた食材を調理してつくった料理をお客さんが『美味しい』と食べてくれる瞬間です。 

 

価値の定まっていないものに価値がついた瞬間に立ち会う感覚ってこんな感じなんだって(笑)

 

料理以外においても、自分の目でみて、自分の中でしっかりと咀嚼しきったリアルな情報って、自分らしさを形成する上でとても大事だと思うんです。

 

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何か考えごとをしたいときは、ついついフラッと散歩に出てしまうのはそのせいなんですよね。

 

「歩いて外に出ることが当たり前じゃない時代だからこそ、できることがある。

 

テクノロジーの進化のおかげで、現時点でもわざわざ外にリアルな情報を探しに行かなくてもよい時代にすでになってますよね。

 

でも、さっきもいった通り、 自分の足で稼いだ情報の価値って計り知れないものがあると思うんです。

 

利便性も大事ですが、そうでないことに未知の価値があることも実際よくありますし、人間の五感から得られる情報の尊さが技術革新がもっと進んだ未来に再評価される時代がくるような気もします。

 

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『Salmon & Trout』に関しては決してアクセスの良い場所にあるレストランとは言えませんが、だからこそ、おもしろい部分もあるんじゃないかな、とポジティブに捉えています。

 

店がなかったら通ることのなかった道を歩くことで思わぬ出会いや気付きが得られるかもしれないですし、どんな料理か想像しながら向かう時間や、余韻を味わいながら帰る時間、考えごとをしながら歩くにはちょうどいい距離感なんじゃないかな、と。

 

また、この場所だからこそできることもあると思っていて、その価値を探すことって、食材の魅力を最大限に引き出すことを考える料理のプロセスと通じてる部分がある気がするんです。

 

自分だからできることを、これからも模索していこうと思っています。

 

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自身の感覚・価値観を大切にし、歩くという行為をそれらを磨きこむためのひとつの手段として捉えている森枝さん。

人々が真の「オリジナリティ」を獲得することは難しいとされるテクノロジーが進化した世界において、彼のような考え方・行動が今後どのようなモノ・コトを生み出していくのかが非常に楽しみである。

 

 

料理人/森枝 幹

英国の『レストランマガジン』がおくる世界のレストラントップ10の常連としても知られるオーストラリアの「Tetsuya’s」で修業後帰国。京料理「湖月」、マンダリンオリエンタルホテル内「タパス モラキュラーバー」でキャリアを積む。その後独立し南青山「246COMMON」出店、2014年からは「Salmon & Trout」のシェフを務める。

 


 

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