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[ WALK✕CONTENTS✕林雄司 ]

不確定要素の宝庫「歩く」
から紡ぐリアルコンテンツ

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「デイリーポータルZ」をご存じだろうか?

 

月間ページビューは平均1500万、サービス開始は2002年のポータルサイトである。

同サイトを一言で説明することは非常に難しい。

ということで、まずは手元のスマホでサイトを見てほしい。

「愉快な気分になりますが、役に立つことはありません」そんなメッセージがみられるはずだ。

 

中には「低温調理器で足湯がしたい」「ウラジオストクの車がパラレルワールドっぽい」などのおもしろネタから「できる男に学ぶスナックの過ごし方」「48文字以内!新幹線で流れるあのニュースの書き方を聞いた」「聴診器をあてる時、服は鎖骨まで上げるのが正解~医療関係者に聞きにくいことを聞いてみた~」などの知っているとちょっとうれしい実用ネタなど、ジャンルレスな記事にあふれている。

 

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そして同サイトの編集長を務めるのが今回インタビューをさせてもらった林雄司さん。

語弊を恐れずにいうなれば彼はくだらないことを真剣に挑み表現するプロフェッショナル。

 

今でこそ「ユーチューバー」なる者の存在が一般に浸透し、さまざまな「やってみた」コンテンツがWEB上に渦巻いているが、思わず閲覧者に「ふっ」と微笑を浮かべさせ、計算されているような計算されていないようなサイトの思惑に、読み手が心地よく踊らされる絶妙な距離感のメディアを、15年にわたり、しかも相当なPV数をたたき出し続けているにはワケがある。

 

そんな想いのもと、林さんを訪ねたところ、「デイリーポータルZ」を続けるにあたってのこだわりは主に2つあるという。

 

それは、すべて「外」で取材をすること。

 

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そして、決して社会やトレンドに迎合することなく、ライター陣が「面白い!」と思ったネタを優先的に掲載していること。

特に外で取材をすることに関しては徹底しているようで、その理由は机上にはないおもしろい不確定要素に外を歩いていると出逢えるからだという。

彼にとっての「歩く」とは。話を聞いてみた。

 

「読者と同じ視界、読者と同じ生活からネタを拾い記事にしたいんです。共感は日常にこそ落ちているものだと思うので。」

 

メディアには様々なスタイルのものがありますが、『デイリーポータルZ』に関しては、人に話してカッコいいと思われるような媒体としてのイデオロギーみたいなものは正直特にないんです。

でも、何かを知っていないと理解できないメディアではなくて、だれでも理解できるメディアを作り手の主観をもとにつくりたい。

 

その想いはいまも昔も変わらず持ち続けています。

だからこそ、僕たちは街中を歩き回って皆の日常から、たとえば人に言うまでもないけど多くの人が内心思っているようなことなどを探し出して、記事にしているんです。

 

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そして、基本的には作り手の主観でつくられた記事の集合体なので、面白いか否かのジャッジは読み手の裁量にゆだねられるわけですが、100人いたら100人がおもしろいと思える記事をUPすることよりも、とにかく記事をたくさんUPしてメディア全体としておもしろいと思ってもらえることの方を大事していますね。

 

ひとつひとつの記事単位で見たときにはとにかく主観を大事にしたいので。

どんなにくだらないことでも作り手が全力で取材して記事に仕立てる、そこにこそ価値があると思うんです。

なんでもすぐに調べればわかる時代ですからね、ネットで調べても出てこない自分たちにしかできないことを読者に届けていたいんです。

 

「いつも歩いている街を、いつもとは違う画角、たとえば上を向いて歩いてみてください。きっと何か発見があるはずです。」

 

僕たちが外で取材する理由は、取材中に思わぬことに遭遇して小さなネタも大きなネタに成り得る可能性を秘めているということもありますが、何よりもいつもと違う目線で歩いていると今までは気付かなかった面白い発見にあふれているということが大きいですね。

 

たとえば、毎日通勤途中に通り過ぎるビルの上が実はメルヘンチックなお城みたいになっていたり、昔から立派だと思っていた看板の裏を覗いてみたら意外なほどにボロかったり。

 

それぞれが具体的にどう、とかいう話ではないですが、たとえばそのような同じカテゴリの写真を外でいっぱい集めて『中国のセブンイレブンっぽい店を集めたシリーズ』とか『買物中の飼い主を待つ哀愁漂う犬シリーズ』とかひとつのコンテンツとして成立したりするんです。

 

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最近記事にもあげたネタをひとつ。

ある日気づいたんですよね。

紅白のヒモと布があれば何なんでも『除幕式』に見えるって。

ということで街を歩きながら看板とかいろんなものに布をかけて、『除幕式』をやってみたのですが、やはり『除幕式』だからなのか全然しらない人たちがちょっと集まってくるんです(笑)

 

そんなハプニングが街歩きには何かしら発生するからおもしろいんですよね。

 

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何気ない日常を何気なくない視点で見るおもしろさを、メディアを通じて発信し続ける林さん。

灯台下暗し。

普段歩きなれた道を今すぐに歩いてみたくなる、そんなインタビューだった。

 

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ライター/林雄司

1971年生まれ。インターネットが今ほど社会に浸透していなかった1996年に個人サイト「東京トイレマップ」、「Webやぎの目」などを立ち上げ注目を集める。ニフティへ転籍後、2002年からは「デイリーポータルZ」の編集長に。『小エロのひみつ』、『会社でビリのサラリーマンが1年でエリートになれるかもしれない話』、『死ぬかと思った』シリーズなど、いままでに計25冊の著書をリリースしている。

 


 

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