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[ WALK✕HISTORY✕渡辺雅司 ]

人々が歩き、訪れた老舗の
過去と現在と未来

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東京都江東区にある亀戸天神のすぐそばに佇む老舗和菓子店、船橋屋。

 

数多くの著名人が愛したことでも知られる同店のくず餅は、味はもちろんのこと健康にも良いと評判で県外から訪れる人も多いという。

 

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そんな船橋屋の和モダンで統一された店内には、落ち着いてお菓子を食べられるスペースが用意されている。

 

船橋屋が創業した1805年当時の人々の主な移動手段はいうまでもなく「歩く」こと。

 

一代目当主が、梅や桜の季節に賑わう亀戸天神の光景をみて創業したという背景もあり、訪れた参拝客にゆっくりと休んでいってもらいたいという想いが現代にも受け継がれているのだろう。

 

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今回取材させてもらったのは船橋屋の八代目当主、渡辺雅司さん。

 

人々が歩いて亀戸天神に向かう道中の癒しのスポットとして生まれ、今もその名残を継承する同店当主に、老舗としての想いを聞いてみた。

 

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「各時代を象徴するライフスタイルにどう溶け込むのかが、老舗が『老舗』として存続するためには大事なんです。」

 

確かに、船橋屋は江戸時代から続く老舗和菓子屋ですが、ただただ昔と同じことをやっているだけではいけないと思っているんです。

 

なぜならば200年もの間、船橋屋がこうして続けられている理由は、うちでお菓子を購入してくれるお客さんがずっといてくれたからであって、それは狙ってか偶然か、うちが各時代のニーズに応えられていたからだと思うんです。

 

だからこそ、もちろん創業時代から続く船橋屋らしさは絶対に残さなければいけませんが、歴史ある老舗だからこそ新しいことに果敢に挑戦していくことが大事だと、私は思っています。

 

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実は、うちは毎年新卒採用を行っているのですが、毎回約1万人ほどの応募があるんです。

 

それはきっと、船橋屋が100年後も続く和菓子屋になるために、創業時から継承される和菓子づくりの技術の構造化や、社内活性化プロジェクトの立ち上げ、などをいち早く取り入れ、実践していることが評価されている証ではないかと。

 

船橋屋のくず餅はこの先もずっと変わらない。

 

でも、そんなくず餅をつくる船橋屋の在り方は時代に合わせて最適なカタチであろう思っています。

 

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「様々な人の様々なストーリーの中に生き続けることが価値だと思っています。」

 

少し観念的な話になりますが、老舗には多くの道がつながっていると思うんです。

 

たとえば、小説家である芥川龍之介は学生時代に授業をさぼってウチにくず餅を食べにきていたらしいのですが、この場合彼にとっては散歩道の途中に船橋屋がある。

 

亀戸天神の参拝客にとっては参道沿い、といったように。2016年に本店のリニューアル工事中に、80~90歳ぐらいの男性の方がうちの前を通り『まさか、建て替えたりしないよね?』って話しかけてきたんです。

 

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当初からリニューアルは旧くから続く建物を活かして行う予定だったので、その旨をその方に伝えると『安心したよ』と一言おっしゃられまして。

 

その時に改めてうちはいろんな人の想い出やストーリーの中に生きていて、だからこそ今後も在りつづけなければいけないんだなと思いましたね。

 

同時に、一般企業と比較するとうちは戦略や経営方針よりも理念がかなり強いのですが、正解だったなと。

 

これからも船橋屋と関わりのあるすべての方々が持つ、様々な『船橋屋』で在りつづけようと思います。

 

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組織マネジメントという観点でみた場合、「老舗」のイメージからは想像できないほど先進的なプロジェクトを社内でおこなっている船橋屋。すべては、200年続く味と誇りを守るために。その純粋かつ明快なこたえが彼らを老舗たらしめる所以なのだろう。

 

 

船橋屋 八代目当主/渡辺雅司

1964年生まれ。国内大手銀行を経て、家業である船橋屋へ。八代目当主として行った構造改革は他領域においても評価が非常に高く、近年は講演なども務める。

 

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