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「歩く」の記録を
蓄積して可視化する

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「GPS」(Global Positioning System)は、もとはアメリカの軍事技術として開発されたものである。

 

今世紀に入って民間への開放と転用が進み、登山や釣り、ゴルフなどのアウトドア用位置情報ガジェットや、カーナビやデジカメ、スマホなどへのGPS装備が普及して、我々にとっても身近な技術となった。

 

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今回紹介するのはそんなGPSを、単に位置情報の機能として使うだけでなく、蓄積したデータから人の行動と都市インフラの関係パターンなどを分析し、新たな発見を世に発信し続けている慶應義塾大学教授の石川初さん。

 

彼は、GPSを表現手段のひとつとして用い、地図上に巨大な絵を描く「地上絵師」の日本における第一人者としても知られる。

 

ランドスケープデザインの専門化として大手企業の勤務を経て、現在は大学教授として活躍する石川さんを魅了するGPSの魅力とは?

 

GPSによってあらわれる「歩くこと」の発見とは?

 

「移動は経験であり記憶。GPSは私が歩いた軌跡を保存し、その記憶の一端を担ってくれるところに魅力があります。

 

最初は20年近く前、アメリカ人の友人に「The Degree Confluence Project」というサイトを教えてもらったことが、GPSの面白さを知ったきっかけでした。

 

このサイトは世界中の緯度経度ぴったりの地点を訪れて、その場所の風景写真を、GPSの位置情報とともにアップするというものなのですが、当時、アップされていた日本の写真は2箇所だけだったんです。

 

しかも、2枚とも外国の方がアップされたもので、これは日本人の自分が参加しなければと(笑)

 

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そんな理由で購入したGPS受信機だったんですが、そのうち、持ち歩くことで移動の記録を取るということ自体が面白くなってきました。ほとんどのデータは自宅と職場を往復するだけの何も特別なことのない記録なのですが、積み重なると思わぬ傾向が見えてきます。

 

移動の軌跡をデジタル地図にプロットして、たとえば時刻で色分け表示をしてみると、深夜バスのルートが浮かんだり、最短ルートを急ぐ朝と寄り道したりする夜の帰路の差が明らかになります。

 

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飛行機の軌跡を立体で見ると、離陸時の急上昇と、着陸時の遠くから慎重に高度を下げてくる飛行との違いなどが可視化されます。

 

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取り続けていると、勤務地の変化でルートが変わることや、毎年通っているスキー場で子供の成長につれてより難しいコースにチャレンジしていく様子が見れたりします。

 

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通常の地図には、昔からある道も最近作られた道路も同じように描かれていますが、GPSの軌跡は私が移動した順番をなぞっているので、私の記憶により近いオリジナルマップになります。

 

軌跡を記録するスマホアプリもいろいろとあります。GPXという汎用の形式で保存しておけば、Google Earthなどでも軌跡を立体的に表示できるので、ぜひ試してみて下さい。

 

「GPS地上絵。それはいつもとは違う仕方で街と再会する契機をつくることでもあるんです。」

 

私が更なるGPSの可能性や魅力に気づいた、もうひとつのきっかけは、ジェレミー・ウッドという英国人アーティストのGPSドローイングという活動でした。

 

彼はGPSを使って、自身の移動データで地上に巨大な絵を描いていたんです。

 

これは面白い、私もやらないといけないと思い、2003年に最初の作品である「アヒル」を近所の街で作りました。

 

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それから同好の仲間も増えて、いくつもGPS地上絵を描きましたが、続けているうちに気付いたことがありました。

 

移動することで描くGPS地上絵は、一種の街歩きです。

 

しかし、地図上で描いた何かの絵が先に決まっているため、実際に街を歩きながら好きな経路に変更したりはできません。絵が乱れるので。

 

そうやって、実際の街の空間と関係ない、地上絵の経路で歩いていると、普段いかに自分たちが歩きやすく気持ちいい経路しか歩いていないか、よくわかります。

 

地上絵の途中で見る風景やそこで出会う街の様子は、通常の街歩きだったら行かないような、とりとめのない住宅地や街路です。でも、街のほとんどはそういう風景でできています。

 

見慣れた街の見知らぬ顔と出会う、そんな契機をGPS地上絵はもたらしてくれます。

 

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自分の軌跡を20年近くも記録し続けていることや、GPS地上絵などという活動をしていることが、仕事にどう生かされているのか、質問されることがしばしばあります。

 

デザインや研究のネタになっていないわけではありませんが、必ずしも何か特定の目的で記録し続けているわけではないのです。

 

10年継続することでわかることもあります。でも、それが目的で10年続けるのは難しいです。

 

あえて言えば「続けてしまう」ことが継続の秘訣です。こんなに続けてきてしまったことが、今後もやり続ける動機になっています。

 

これは、GPSで移動の記録を取るようになった人が皆言うことですが、毎日の決まった道でも、歩きながらそこに線が引かれるのを想像し、自分の移動が地図を描くような気持ちになってきます。

 

私の移動が私の地図を描く、歩きながらそんな風に思いを馳せることも、GPSの面白さです。

 

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歩くことだけではない、人の移動をGPSというテクノロジーでデータとして蓄積し、さまざまな発見をしつづける石川さんのインタビューを通して、最も印象的だった言葉「移動は経験であり記憶」。

 

私たちのとりとめのない日々の移動も、記録をとりつづけることで、そこから何かを見つけることができるかもしれない。

 

そんな高揚感を抱いた1日だった。

 

 

地上絵師/石川初

1964生まれ。東京農業大学農学部造園学科卒業後、国内大手インフラ企業にてランドスケープデザインを担当し、20154月より慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科/環境情報学部の教授。東京大学大学院新領域創成科学研究科非常勤講師、早稲田大学創造理工学部建築学科非常勤講師も務める。

 


 

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