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人間の基本行動をベースに
デザインされるショップ

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「すれ違う人が美しい」。

 

1973年、渋谷に某ファッション商業施設がオープンするにあたって展開した広告のキャッチコピーである。

 

いま思えばこれは、ひとつの商業施設を起点とした集客戦略ではなく、街全体で集客を促進するために街の風景からデザインをしていこうという意思が息づく極めて前衛的なものであった。

 

一方で、このキャッチコピーは、人々のショッピング・回遊は「外」で行われるのが当たり前で、実店舗が圧倒的な力を持っていた時代の象徴ともいえるものである。

 

あれから約半世紀、世の中はインターネット・スマホの進化、カルチャーの細分化に伴い変化し、ショッピングは手元で完結できるものへ、実店舗はエッジの効いた個性やそこで体験できる価値が求められる時代へと変貌を遂げた。

 

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そんな時代において、街全体を盛り上げていこうという動きは行政やインフラ企業を中心に急速に進められ、さまざまなプロモーションが走っているが、実店舗で体験できる価値に言及するプロモーションは粒感としてはそれらに比べると小さく、一般的な認識としてはまだまだ薄いと言っても過言ではない。

 

今回はそれらに対して、商業デザイン・インテリアデザインという切り口から、新たな都市のありかたについて発信している建築家でもありインテリアデザイナーでもある浅子佳英さんを取材し、現代における魅力的な実店舗とはどのようなものなのか、そしてヒトを起点とした「歩く」という行為からみた際に「良いショップ」とはどのようなものなのかを聞いてみた。

 

 

「歩いていて心地よいか否かということは今後街や都市をつくる際の基本的な条件だと思います。」

 

インターネット・スマホの普及が急速に加速したこの数年で、実店舗の競合は実店舗だけではなく、WEBショップもその対象として捉えられるようになってきました。

 

消費者の購買が近い将来に20%を超えるといわれる中、実店舗の在り方、実店舗だからできる『空間』の作り方も大幅な見直しが必要な時代に差し掛かっています。

 

これは個人的な見解ですが、今後は消費者に求められる実店舗は二極化すると思っています。

 

ひとつは、駅ビルやエキナカのような交通のハブに存在している実店舗です。

 

それらは日常の『ついで』として寄ることができ、ネット上で商品を検索・購入するよりもよりアクションが早いのが最大のメリットです。

 

もうひとつはわざわざ行かなければ体験できない価値を消費者が得られる、心地よい空間設計がなされた実店舗です。

 

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この2つの中でいうと僕が創りたいのは後者なのですが、その前にまず基本スペックとしてお店のある場所、そもそもそのお店までわざわざ歩いていきたいと思える街なのかどうかが重要なんです。

 

たとえば百貨店とショッピングモールを比較するとわかりやすいのですが、百貨店って往々にして空間自体がせまいですよね?

 

それでいて一階にはハイブランドがひしめき合っていてとても入りづらい。

 

一方でショッピングモールは百貨店と違ってフロアも広く、大きな吹き抜けの上部からは外光が降り注いでいて単純に空間として気持ちいい。

 

しかも所々にベンチがあり、飲食店も数十メートルおきに入っていて、導線もゆるやかにカーブしていて先を見通せないようになっているので、歩いていて楽しい。

 

このように、ショッピングモールはその内部はよくできているものの、外観は無機質な箱になっていることが多い。

 

消費者がわざわざ行きたくなる実店舗をつくるためには、ショッピングモール的な空間を再び都市空間で再現するというような方法か(再開発などはこちらでしょう)、それができなければ、今ある街をリサーチして、その街自体を自分の店のためのアプローチに利用するといった方法が必要なのだと思います。

 

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「良いショップとはいつ行っても新しい発見がある場所。世界の多様さに出会える空間だと思うんです。」

 

僕がいままでみてきた中で、もっとも面白いと思ったのは『ドーバー ストリート マーケット』という『コム デ ギャルソン』がロンドンにつくったお店でした。

 

そこは、外観は古い建物をそのまま利用し、ショップのセレクトや空間設計自体が良い意味でバラバラで完成しておらず多様性に満ちているので、歩いていて本当に楽しいんです。いまの日本のファッションってショップはもちろん業界的に保守的というか、ノームコア的な側面がまだありますよね。

 

ファッションこそ強烈な個性が混在する状態を率先しなかればならないというメッセージをお店の存在自体が示しているようで目が覚める思いでした。

 

もちろん、いち消費者が歩いていて心地よいという空間設計も大事なのですが、『ドーバー ストリート マーケット』のように国籍や身分に関係なく、すべての人にとって刺激を与えてくれる新しいイメージを打ち出したショップっていまはとても少ないと思うんです。

 

オリンピックが近づいていることもあって、最近よく見かけるのですが、なんでもかんでも『江戸風』に仕立てる風潮も自国民だけが素晴らしいみたいに見えてしまうのでいかがなものかと(笑)

 

とにかく、世界が急速に保守化していく中で、新しいイメージを生み出す事、そして多様性のある空間をつくることは重要だし、僕もそのような空間をつくっていきたいと思っています。

 

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もともと、建築業界においてさほど重要視されていなかった「インテリア」という領域にいち早く着眼し、人々の基本行動に寄り添った空間設計・デザインを行ってきた浅子さん。

 

「個性」、「オリジナリティ」という言葉が乱立する現代において彼がどのような空間をこれから創り上げていくのかが楽しみでならない。

 

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建築家・インテリアデザイナー/浅子佳英

1972年生まれ。建築設計事務所、インテリアデザイン事務所を経て、2007年にタカバンスタジオ設立。

 

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